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島は狭い!

2017年9月15日

こんにちは。

放送・施工技術事業部 石川です。

 

私は主に、関東一円で放送機器の保守業務を行っています。

東京都では伊豆諸島などにも出張するのですが、

先日はその中の御蔵島に緊急の作業で向かうことになりました。

 

 

 

 

この御蔵島は交通が非常に不便で、飛行機で八丈島か三宅島に移動し、

そこからヘリで島に降りるか、一日一便の東京は竹芝からの大型船を利用して移動するしかありません。

 

ですがこの日は、数日前から停滞する台風の影響ですべての移動手段が

ストップしている状況で、前日からの待機を余儀なくされていました。

 

台風は北上し始め若干天候は回復に向かっていましたが、雨風は依然強く、

果たして無事に現場にたどり着けるのか、と飛行場の待合ロビーで不安を感じていました。

しかし、飛行機もヘリも強風の中、何とか出発し無事に御蔵島へと到着。

作業自体は簡単なものでしたので、数時間で復旧しました。

 

 

さて作業は終わりましたので、また自宅まで戻らないといけないのですが、この時間

ですと大型船、もしくはヘリから飛行機での移動、両方を選ぶことができるようです。

 

船のほうが移動時間が長いのですが、空路の早い便が予約で埋まっており、

どちらも到着時間はそれほど変わりません。

 

ここで20kgほどの機材をスーツケースに入れて移動し汗だくになっていた私は迷わず

船を選びました。

なぜならこの船、名前を橘丸といいますが、船内には、なんとシャワールームが完備されているからです。

年頃の男性である私はスメルマネジメントに敏感でした。

 

 

 

橘丸の乗船券を購入するため港まで行くと、港湾作業員の監督者らしき方が

難しい顔をしているのが見えました。

 

窓口で乗船券を購入したい旨を伝えるとその監督が私に話しかけてきました。

どうやら依然風が強く、時折桟橋を超える波が来るため船を着岸させるか決めかねているとの事です。

着岸作業中に桟橋を超える波が来ると人も車両も海に飲み込まれてしまうそうで、

十数年前にはトラック2台が海に引きずりこまれる事故も起きたそうです。

幸い運転手の方は救助が間に合い無事脱出したとの事でした。

 

この港での乗客は私一人でしたが、監督は疲れた私の顔を見て哀れに思ったのか、

波は先ほどよりも治まってきている様子だから、このまま桟橋を超える波が来なければ

着岸作業に移ることにする、と声をかけてくれました。

着岸時間までは一時間、待合室で監督と数人の作業員の方と共に窓越しに桟橋を睨みつけます。

時々来る高い波が桟橋の横腹を叩くたび、私を含む中年たちの野太い安堵とも不安とも取れない声が待合室に響きます。

 

高い波は何度か来ましたが幸いなことに桟橋を超えることはついに無く、

着岸5分前、汽笛を鳴らしながら橘丸が霧の中から大きな船体を現しました。

 

無宗教な私ですがこの時は神さまに感謝しながら、日ごろの行いが良かったからかと自分を褒めました。

橘丸は少し斜めに通り過ぎて、後退しながら船体を桟橋に寄せます。

残り20m、15m、10m、作業員の方たちがタラップを取り付けるために桟橋に近づきます。

 

 

 

その時です。

 

「だめだ!欠航だ!」

 

窓口の女性の悲鳴のような声が印象的でした。

 

あと5mというところで今までの一番の高波が桟橋の上をさらいました。

作業員の方たちは巻き込まれないようクモの子を散らすように安全な場所に避難します。

 

橘丸も桟橋にぶつからないように巧みに退避すると、無常にも次の島へと進路をとり

霧の中へと消えていきました。

無宗教な私ですがこの時は神さまに恨み言をいいながら、日ごろの行いが悪かったからかと自分を諌めました。

 

 

家には帰らなければなりません。

重いスーツケースを引きずりながら、残された移動手段のあるヘリポートへと移動します。

ちなみにこの島、一番低い場所に港、一番高い場所にヘリポートがあります。

 

つまりこの島で一番長い距離を移動することになります。徒歩で。 徒 歩 で 。

無宗教な私ですがこの時は輪廻思想とカルマについて考察しました。つまり現実逃避です。

 

最初から素直に空から帰ればよかった、と現実逃避に失敗し後悔の念に苛まれながら

ヘリポートにつくと、息も整わないまま搭乗の受付を係員の人にお願いしました。

10秒ほど深呼吸をしてから受付の人の顔を見ると、あれ、どこかで見覚えがある。

 

そう先ほどまで港で作業していた作業員の方のうちの一人です。

人口の少ないこの島では一人でいろいろな仕事を兼務しています。

お互い苦笑いをしながら手続きをしてもらいました。

 

手続きを済ませると、ヘリの到着まで2時間ほど。

いつもなら島を少し観光したりするのですが、

過酷な移動により私の大腿四頭筋は限界を迎えており、待合室でぐったりとしていました。

地形に沿って作られるこの島の坂道は本当に急なのです。

 

 

しばらくすると若い女性の受付員の方が入ってきて受付に座ります。

このヘリポートで搭乗するのはやはり私一人、搭乗手続きも無く、

手持ち無沙汰の受付の女性と作業員の方はおしゃべりを始めます。

 

話題はもちろん先ほどの港での出来事。

昔、桟橋からトラックが波に呑まれた話を聞くと、受付の若い女性が一言。

 

「あ、それ、うちのお父さん」

 

島、狭! と思ったという話。

 

 

ちなみに、この後無事に帰宅し熱いシャワーを浴びた後、駅前に飲みに行きました。

 

次回は伊豆大島で火口付近でジョギングをしていたら猿に追われた話をお送りしたいと思います。お楽しみに。

 

 

 

 

 

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